かごの買い付けに同行して。

たのしみコラム2017-06-18

こんにちは、「ほぼ日」のやえです。

スタイリストの伊藤まさこさんが
「生活のたのしみ展」でつくったお店は、
伊藤さんがだいすきなかごのお店でした。

「育った所によって、素材の質が違うので、
 必然的に編まれているものも違ってきます。
 お客さんにいろんな素材と形を見ていただきたくて、
 長野県内をいくつかと、別府を回ってきますね」。

このとき伊藤さんは「ひとりでもだいじょうぶー」と
あっけらかんとおっしゃったのですが、
たくさんのかごを
おひとりで運んでいただくわけにはまいりません。
「私がご一緒いたしますー!」と手をあげて、
2月最後の週、かごの買い付けの旅に
同行させていただきました。

まず、訪れたのは、大分の別府。
室町の昔から本格的な竹の工芸品の
生産がはじまったという歴史ある街です。
ちょうど3年前、「白いもの。」の連載で、
「白竹(しろたけ/しらたけ)」の取材に
訪れたところでもあります。

未読のかたは、「日本のかごのお店」を見る前に、
ぜひご一読くださいませー。
■白いもの。〜伊藤まさこさんと「白」をめぐる、ちいさな旅



別府は2月だというのに、
とてもあたたかったです。
東京ではダウンを着込んでいたのに、
別府では薄手のコート。
日中はコートさえいらないあたたかさでした。
そして、街のいたるところから、
もうもうと湯けむり!
ああ、別府に来たー! 温泉ラブーー!
と思いましたが、目的はかごの買い付けです。




最初にうかがったのは「福助堂」さん。
伊藤さんは店が見えたときから、
目をキラキラとさせて、
心が踊っているようでした。

伊藤さんのかご選びは、
パッパッとハイスピードで、
悩んだり、迷ったりすることはありませんでした。
「これは手がていねい」
「こっちはここが雑になってるわ」
と、パッと見抜きます。
気に入ったものを見つけると、
「この色、いいわあ。育つわー」
「このかたち、もうつくれないわねえ」
とほれぼれと愛でられます。



「福助堂」のご主人と奥様に
気になったかごをつくった職人さんや
作り方についてうかがいながら、
いまでは作る職人さんがいなくなった貴重なかごから、
気楽にがんがん水仕事に使えるお手頃なかごまで、
たっぷり調達できました。




次にうかがったのは、「竹苑」さん。
こちらのお店では、工房や作家さんたちがつくった
白竹のかごバッグやざるとたくさん出会えました。




別府の最後に訪れたのは「竹工芸 山正」さん。
人間国宝のすばらしい作品を拝見したり、
別府の竹細工の歴史や現状を
ていねいに教えていただきました。



伊藤さんが「かわいいー!」と
よろこんでおられた「白竹バスケット」。
3月の「生活のたのしみ展」では
あっという間に完売してしまったため、
追加で作っていただきました。
数はわずかですが、webで販売します。



▲使い込んでいくと、
写真左のように飴色に変わっていきます。



続きまして、長野、戸隠のようすをお伝えします。
この別府訪問の2日後に
長野を訪れましたら、なんと雪でした。





長野、松本は雪がちらちら。
戸隠(とがくし)は一面の雪景色! 
風が吹き込むあたりは、
背よりも高く雪が積もっていました。
これではたしかに、生える竹の種類も違ってきます。



最初にうかがったのは、
松本の「柏善 上原善平商店」さん。
伊藤さんに教えていただいたのですが、
松本の竹細工といえば、
篠竹(しのだけ)をつかった
「みすず細工」が有名だそうです。
柳宗悦さんが『手仕事の日本』(1948年刊)のなかで、
「どの家庭でも、愛用されてよい品だと思うので、
もっと世に知られることを望みます。」
とお書きになられた竹細工です。
いまでは作り手も少なくなってしまい、
なかなかお目にかかることはないそうですが、
ありました!
しかも大物が!
子どもがすっぽり入れそうな大きなかごです。



伊藤さんは、
「よかったあ、みすず細工があって」と
うれしそうにされてました。
(今回、みすず細工のものは2点販売します)




戸隠では「手力屋」さんにおうかがいしました。
みすず細工は篠竹を使いますが、
戸隠の竹細工は根曲がり竹を使います。
別府の白竹(加工前の名前は真竹)とは、
太さがぜんぜん違います。
ふと、竹馬遊びというのは、
あたたかい地方の遊びだったんだなあと
気がついたりしました。



根曲がり竹は、
他の竹に比べて、さらに水に強いので、
蕎麦ざるや水回りの仕事をするときのかごに
重宝されたそうです。

ところで、手力屋さんで、
伊藤さんがよろこんでおられたのが、
1本手の四角いバッグ。
書類やPCを持ち歩くときに便利そうです。



そして、ねじりながら編み上げる独特なかご。
素朴で、力強く、それでいながら、
やわらかさも備え持つ竹細工です。




「伊藤まさこの日本のかご」では、
別府、長野、戸隠のいろいろなかごが並びます。
どうぞ、おたのしみにー。

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