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【たのしみ弁当】味坊

味坊

中国全土のおいしいものがギュッと!

中国東北地方の家庭料理を楽しめる、
知る人ぞ知る神田の名店「味坊」が厳選した
18品が詰まった、大満足のおべんとう!

2000年に、神田のガード下でひっそりとオープンした
「味坊」(あじぼう)。
店主の梁宝璋(リョウ ホウショウ)さんがつくる
黒竜江省(中国東北地方)の家庭料理の味は、
ジワジワと話題を呼び、いまや3店舗に増えたお店は、
付近で働く人たちやらわざわざ訪ねてきた食通たちで
連日にぎわいを見せています。

▲こちらは御徒町にある3店舗目の『羊香味坊』。

そんな梁さんに、今回、無理を承知で
「おべんとうをつくってください!」
とお願いをしたところ、快く引き受けていただくことに!
そしてできあがったのが、
この「呑ん弁」(のんべん)です。
「ちびちび食べながら、
おいしいお酒を心ゆくまで味わって欲しい」。
梁さんのそんな思いが詰まった、
呑ん兵衛のための“おつまみべんとう”です。

ふたを開けると、コンパクトな容器に入りも入ったり18品。
梁さん、いったいどのようなコンセプトで
この18品を選んだのでしょうか?

「今回はおべんとうということで、
冷めてもおいしいもの、
という点を何よりも重視しました。
当然、汁ものは難しいですしね。
あとは、味のバランスを重視しました。
肉と野菜、甘さ、辛さ、酸っぱさ‥‥。
いろいろ考えた結果、
普段お店で出している中国東北料理だけではなく、
中国全土のおいしいものを
詰め合わせようということになりました。

▲ひとつひとつ丁寧に説明してくれる梁さん。

とはいっても、ピータンや牛のアキレス腱は、
わたしが生まれ育った黒竜江省の郷土料理ですし、
香辛料の入ったスパムも、
ハルピン腸詰めの味に近いと思います。
ちなみに、これらの料理は、
普段はお店でも出していません。
今回選んだ18品の中で、お店でも食べられるものは
“大根の漬け物”と“羊肉”くらいかな」

なんと! 「味坊」を知っている人にも、
知らない人にもたまらない、
希少価値の高いおべんとうなわけですね。
それでも、「味坊」の看板というべき
羊肉が入っているのは、嬉しい限りです。

「羊肉は時間が経つと固くなってしまうので、
今回採用するかどうか悩んだのですが、
もも肉だったら脂が少ないので大丈夫かなと。
それで結局、丸焼きをスライスして、
一切れ入れることにしました」

▲味坊といえばやっぱり羊肉!

そのほか、いろいろな“おかず”が入っていますが、
珍しいものでいうと、何がありますか?

「鴨の舌ですかね。香港料理ではポピュラーですので、
食べたことがある人もいると思いますが、
“おべんとう”の具材として採用されるのは、
もしかしたら日本ではじめてではないでしょうか!
とてもおいしいので、ぜひ味わってください」

▲鴨の舌!これがピリ辛でほんっとーにお酒にあう!

というわけで、梁さんが選び抜いた18品を、
ご紹介いたします!

■車海老の塩茹で

「ショウガとネギと八角を入れた塩水に、
生の海老をしばらく浸けてから茹でています。
薄味だけど、ほんのり塩味がしっかり入っていますよ」

■麻辣鴨舌

「花椒、唐辛子、醤油、砂糖で味付けしました。
辛みの効いた味わいが、
ビールやワインにぴったりだと思います」

■牛アキレス腱の醤油煮

「中国東北地方の郷土料理です。
肉を煮る時に、20種類のスパイスを入れています」

■東坡肉

「豚バラの煮込みです。とっても柔らかいですよ。
八角の香りも楽しんでください」

■中華風スパム

「挽肉を型に入れ、卵の黄身を塗って蒸しています。
香辛料が入っているので独特の風味がすると思います。
中国東北地方の郷土料理のハルピン腸詰めに
近い味わいです」

■ピータンの鳥もも肉巻

「ピータンを鶏のもも肉で巻き、それから蒸しています。
ピータンも、中国東北地方の料理なんですよ。
ご存じでしたか?」

■窯焼き叉焼

「ほんのり甘い、『これぞ中華のチャーシュー!』
という味わいだと思います。後味がいいですよ。
ハチミツで甘さをつけ、腐乳で赤みを付けています。
ちなみにこの味付けは広東料理から来ています」

■鴨の薬味焼き

「スパイスに漬けてから焼き、
その後で骨を外しています。これも自信作です」

■茭白竹の天ぷら

「日本の天ぷらとちょっと違って、
薄いパンに包まれているような食感です。
茭白竹(まこもだけ)にも、
衣にも味が付いているので、
そのままおいしく食べられますよ」

■昆布巻

「ピリッとした塩味が効いています。
食感といい味といい、いい箸休めになるかなと」

■胡麻牛蒡

「肉が中心のおべんとうなので、
バランスを考えて入れました。
ごまの香ばしさが口の中で広がります」

■焼売

「材料は、豚肉、ニンジン、アスパラ、タマネギ、
しいたけ。肉にしっかり味が付いているので、
お醤油はいらないと思います」

■小肉まん

「小籠包みたいにツユが出るので、
一口でパクッと行ってください!」

■春巻き

「鶏肉、ゴボウ、ニンジン、山芋が入っています。
さっぱりした味わいです」

■梨の赤ワイン漬け

「こちらも箸休めになればと入れてみました。
甘さは控え目にしてあります」

■茹で野菜

「ブロッコリーとアスパラを、
ごま油でサッと茹でました。
肉との相性もいいと思います」

■大根の漬け物

「お店でも人気の、酸っぱくて辛い漬け物です。
口の中がさっぱりしますよ」

■羊のもも肉

「羊の脂は融点が低いので、
時間が経つとすぐ固まってしまうんです。
なので、おべんとうには向かないかなと思いましたが、
やっぱり『味坊といえば羊肉』という期待に
応えなきゃと思い、丸焼きのスライスを入れました!」

いろいろな食感と味付けのお肉、
箸休めの昆布や梨や漬け物、
そして少しとはいえちゃんと入っている炭水化物‥‥。
試食をして思ったのですが、
ここまでひとつひとつ素材と味が変化するお弁当って、
なかなかないんじゃないかと思います。
「生活のたのしみ展」でしか味わえない
「味坊」のおべんとう、
ぜひ、楽しみにしていてください!

写真(food):石井宏明